あなたの知らない仏像の世界

曹洞宗のお寺では様々な仏さまを祀っています。中には初めて見る仏さまもいらっしゃると思いますので私(住職)の勉強も兼ねて曹洞宗宗務庁が発行している「宗侶必携」という本の内容をもとに簡単ですが説明いたします。随時更新していく予定です。また画像も載せたいのですが著作権の問題があるので機会があれば撮影し少しずつ載せていきます)

 尊像の種類
大きく仏部・菩薩部・明王部・天部の四部類に分けられます。


 「仏部」

仏部の中で宗門のお寺でお祀りされているのは釈迦牟尼仏・阿弥陀仏・薬師如来・大日如来などです。仏部の尊像は如来形ともいいます。
仏部の尊像の特徴は頭に肉髪(にっけい)というこんもり高くなったところがあり頭髪が螺髪(らはつ)というまき毛です。
額に白毫(びゃくごう)という水晶のような光った白い綺麗な毛の渦があります。
身体にはお袈裟をかけていて右脇が露われているのを偏袒右肩(へんだんうけん)といい露われていないのを被著通肩(ひちゃくつうけん)といいます。
脚は結跏趺坐(けっかふざ)や半跏趺坐(はんかふざ)立っていられたり腰かけられていたり横に臥していられるのもあります。
それから印相という手の形があります。通印・転法輪印・定印など様々ですが印相は諸尊がその内証の本誓を表すとされています。
以上は仏部の尊像に共通している特徴なのでそれらだけでは何の仏さまなのかわかりません。
何の仏さまか見分けるためには持ち物を確認します。ただし釈迦牟尼仏と阿弥陀仏は一般に何も持っていません。しかし釈迦牟尼仏と阿弥陀仏とは印相が異なっているので容易に判別できます。
  釈迦牟尼仏
宗門で本尊としてお祀りする尊像は坐像で定印を結んでおられます。立像や臥像のこともありますが極めて稀です。
脇侍は文殊・普賢菩薩あるいは迦葉・阿難尊者でありときにはその四体の場合もあります。
他に誕生の釈迦牟尼仏・出山の釈迦牟尼仏・転法輪の釈迦牟尼仏・涅槃の釈迦牟尼仏などもあります。
  阿弥陀仏
弥陀の印を結んでおられ坐像や立像です。立像のときは身をやや前方に傾け私達衆生に切々なお心を向けられています。脇侍は観音・勢至菩薩であり二十五菩薩が随侍していられることもあります。
  薬師如来
手に薬壺を持っていられます。ただし聖徳太子が法隆寺に安置された薬師如来は薬壺を持っておられません。
  大日如来
仏部の尊像の中で大日如来は例外的に頭髪を結い宝冠を頂き金銀珠玉を身につけています。
  仏弟子
仏弟子・羅漢・祖師さま方は厳密には仏部ではないのでしょうが宗門では他のいずれの部においてより仏部が穏当であるそうです。
仏弟子とはお釈迦様の直弟子で智慧第一舎利弗尊者・神通第一目犍連尊者・頭陀第一魔訶迦葉尊者・天眼第一阿那律尊者・解空第一須菩提尊者・説法第一富楼那尊者・論義第一迦旃延尊者・持律第一優婆離尊者・蜜行第一羅睺羅尊者・多聞第一阿難陀尊者を特に十大弟子といいます。
  羅漢
羅漢とは阿羅漢の略称で供養と尊敬を受けるに値する人の意味です。日本語では応供と訳されます。
賓頭盧尊者や周利半託迦尊者の十六羅漢や五百羅漢などが有名です。基本的には剃髪し袈裟をかけた僧形に表されます。
  達磨大師
いわゆる達磨さんです。禅の思想を中国に正しくお伝えされた印度の祖師で碧眼で朱色の法衣を頭から被られ宗門では須弥壇の向かって左後方に尊像を安置いたします。
  両祖大師
高祖承陽大師道元禅師と太祖常済大師瑩山禅師です。両大師とも椅子に座って坐禅をなさっています。高祖大師は黒染の法衣にねずみ色のお袈裟を太祖大師は紫の法衣に金襴のお袈裟をかけておられます。
  開山禅師
そのお寺のご開山(お寺を開かれた方)で両祖さま方と同じく椅子に坐禅され法服はだいたい荘厳衣ですが当庵の開山さまは椅子に座り手に警策を持っています。


 「菩薩部」

菩薩部の尊像には文殊菩薩・普賢菩薩・観音菩薩・勢至菩薩・地蔵菩薩・弥勒菩薩・虚空蔵菩薩・般若菩薩などがあります。 
特徴は温顔・上半身は裸で袈裟をまとわず下半身には裙(すそ)をつけておられます。
宝髪といって頭髪を綺麗に結っていられ垂髪といいふさふさした髪を肩まで垂らしておられます。
金銀珠玉をちりばめた宝冠を頂き胸飾や腕釧(うでわ)などの豪華な装身具を身に着けていられます。
坐像や立像・腰かけていられるのもあり片方の脚だけを垂れて腰かけていられるものもあります。
しかしこれらは菩薩部に共通するものですのでそれだけでは何の菩薩であるか見分けることは困難です。一般には印相や持物あるいは乗物で見分けます。
  文殊菩薩
坐像で金毛の獅子に乗っていられる場合が多く手にはお経か宝剣あるいは蓮華を持っていられる。純真な童姿の童形の文殊や雲を船として乗っておられる渡海の文殊もあります。
他にも僧形の文殊といって宝冠も胸飾もなくお経も宝剣も持たず頭髪を剃り法衣をまとわれ如意だけを持っていられるものもあります。僧形の文殊さまは僧堂の中央に奉安し聖僧さまとしてお祀りしています。
  普賢菩薩
坐像で六牙の白象に乗っていられる場合が多い。合掌していられることもあり蓮華や如意を持っていられることもあります。
  大権修理菩薩
須弥壇の向かって右後方(達磨さんの反対側)に安置してある像です。右手を額にかざし遠望の姿をしておられます。道元禅師が中国からお帰りになるとき菩薩がひそかに後を追ってこられたので禅師さまが問われると「我は招宝七郎大権修理で正法護持のために参った」と答えられたといいます。
  跋陀婆羅菩薩
賢護菩薩ともいいます。菩薩はかつて威音王仏の弟子となり浴司(お風呂の係)をつとめ水を観じて悟を開かれたといわれその因縁を尊び浴室に安置し入浴するごとに菩薩を偲びその扶護を仰ぎます。